空を重層的に分断する「韓国型3·4重防衛網」
KAMDはパトリオット(PAC‑3)、M‑SAM(天弓‑II)、L‑SAMを軸にした多層防衛網だ。
- 高度40km以下:PAC‑3・天弓‑IIが中・低高度の弾道ミサイルや巡航ミサイルを防ぐ、
- 約40〜60km:『韓国型サード』と呼ばれるL‑SAMが降下段の弾道弾を迎撃する。
ここに2030年代中盤までにL‑SAM‑II(高度80〜100km級)、SM‑3導入、LAMD(韓国型アイアンドーム)が加われば、同一弾道弾に対して最低でも2〜3回の迎撃機会を持つ構造になる。
L‑SAM、「マッハ4.5で空中のミサイルを仕留めるミサイル」
L‑SAMはKAMDの「上層部の盾」だ。高度40〜60kmでマッハ4.5で飛来する北朝鮮の弾道ミサイルに衝突して破壊する一種のキル・ビークル(Kill Vehicle)に相当する。2023〜2024年の試験で実弾標的の迎撃に成功し、2026年中盤から順次実戦配備に入る見込みだ。2024年の防衛事業推進委員会ではL‑SAM‑IIの開発が承認され、2035年までに迎撃高度を約2倍(80〜100km程度)に引き上げる長期計画も盛り込まれている。これは、北朝鮮が頂点高度の低い変則弾を発射しても、上層・中層で二度以上防ぐ狙いを持つ構想だ。
地上を移動して守る「ビホ複合」と低高度の盾
多層防衛網が空域を層別して防ぐなら、ビホ複合のような機動対空システムは地上の死角を追いかけて埋める役割を担う。ビホ複合はK‑30ビホ自走対空砲に携行型地対空ミサイル「シングン」を統合した移動式対空システムで、30mm機関砲2門と誘導弾4発を同時に運用する。車載レーダーと電子光学装置(EOTS)を連動させ、低高度のドローンやヘリ、巡航ミサイル、誘導弾を自動で探知・追跡する。防空自動化システム(C2A)と接続すれば、他のレーダーから受け渡された標的も処理可能だ。山岳地帯や都市部、前方の旅団級部隊に分散配備されるため、固定レーダーが見通せない谷間や死角を機動防空で補う形になる。
静止式防空の脆弱性、韓国は機動・分散で補う
ロシアのS‑400・S‑300系列は高い迎撃能力を持つが、固定式レーダーや発射陣地に依存するため、ウクライナでドローンや巡航ミサイルの奇襲を受けたと指摘される。韓国はこうした教訓を踏まえ、KAMDを固定陣地+機動陣地+分散型対空砲の構成で設計している。KAMD作戦統制所(KAMDOC)と中央防空統制所(MCRC)が全体を管理し、前方のビホ複合・天弓・天無などの機動戦力が各部隊周辺の低高度脅威を追尾して処理する「動く防空網」を志向している。
「1発に2,000ウォン」レーザー防空、既に実戦配備
北朝鮮がドローンや多連装ロケット、自爆UAVを大量投入すれば、迎撃ミサイルだけではコストと弾薬の負担が重くなる。そこで韓国は世界初のレーザー対空兵器「天光」を実戦配備した。
- 20kW級の光ファイバーレーザーを用い、1回の照射コストは約2,000ウォン(約¥200)程度とされる、
- 10〜20秒間標的を照射してドローンのバッテリーやエンジンを焼き切る方式で、
- 2024年の公式試験で迎撃成功率100%を記録した。
天光は首都防衛司令部から配備が始まり、今後前方や主要施設へ展開されれば、ビホ複合やLAMD(韓国型アイアンドーム)とともに「低高度・小型脅威専用の盾」として機能するだろう。
「100%防御」は存在しない…それでも北朝鮮にとっては厄介な体系
専門家は北朝鮮のミサイル防御を「確率の戦い」だと説明する。変則機動や低高度滑空、砲弾・ドローン・ミサイルの同時飽和攻撃など、どの国の防空網でも完全には防げない。ただし韓国は
- PAC‑3・天弓‑II・L‑SAMの第1・第2段階およびSM‑3による多層迎撃、
- ビホ複合などの機動防空で低高度や死角を追尾、
- 天光レーザーやLAMDによる低コストでの大量迎撃により、迎撃試行回数を最大化する構造を構築している。
北朝鮮にとっては、一発で突破させるのではなく、複数発を同時に異なる軌道で撃たねば一部を貫通させるのが難しい、非常に厄介な防空網だ。
朝鮮半島向けに最適化された防空、輸出カードとしての台頭
山岳地形が約70%を占め、敵との距離が短い朝鮮半島の地形特性から、韓国型防空システムは自然と「高高度迎撃+山岳機動防空」の組み合わせへ進化してきた。この組み合わせは、ロシアの脅威を想定するポーランド、ノルウェー、ルーマニアなどにも魅力的なモデルとして挙げられている。実際、天弓‑IIはUAEやサウジへの輸出・契約が成立し、ビホ複合はインドのパンチール‑S1の代替候補として検討されるなど、K防空システム自体が一つの輸出パッケージとして浮上している。