北朝鮮のハッキング手法が「コード」から「人」へと移行し、リップルが内部脅威情報を業界と共有する新たな対策に乗り出した。セキュリティの焦点が技術から人的侵入へと移りつつあることで、市場の警戒感が強まっている。
リップルは5日(現地時間)、自社のセキュリティチームが確保した北朝鮮ハッカーに関する内部情報をクリプト業界と共有し始めたと発表した。この措置はクリプトセキュリティ情報共有団体であるクリプトISACと協力して行われ、最近の一連の攻撃手法の変化に対応することが目的だ。
「ハッキングではなく侵入」…ドリフト事件が変えた認識
最近発生したドリフト攻撃は、従来のハッキングとは性質が異なっていた。脆弱なスマートコントラクトを狙ったのではなく、北朝鮮の組織が数か月にわたって内部関係者と信頼関係を築いたうえでマルウェアを仕込み、その後ウォレットのアクセス権を奪取して約2億8500万ドル(約4200億ウォン相当、約420億円)を奪った。
この過程で既存のセキュリティは異常を検知できなかった。外部からの侵入ではなく、内部ユーザーを装った攻撃だったからだ。
2022年から2024年にかけてのDeFiハッキングは主にコードの脆弱性を突く攻撃が中心だった。しかしセキュリティ水準が上がるにつれ、攻撃手法は次第に人を標的にする方向へと変化している。
偽の応募者に扮して…企業内部に侵入するハッカーたち
近年、北朝鮮のハッキング組織はクリプト企業の採用過程にまで侵入する手法を用いるようになった。正規の応募者を装って面接を通過し、ビデオ会議を通じて関係を築いた後に内部アクセス権を確保するケースが確認されている。
リップルはこうした攻撃パターンを識別できるよう、さまざまなデータをクリプトISACに提供している。LinkedInのプロフィール、メールアドレス、位置情報、電話番号など、攻撃者の特定に役立つ情報が含まれる。
リップルは「クリプトセキュリティにおいて最も強力な防御は『共有』だ」と述べ、「ある企業で落選した脅威人物が同じ週に別の企業に応募することが繰り返される。情報共有がなければ各企業は毎回最初から対応しなければならない」と強調した。
ラザルスグループの影響拡大…法的紛争へ波及
北朝鮮のハッキング組織「ラザルスグループ」の影響力はセキュリティ領域を超え、法的紛争にも広がっている。
最近、ある弁護士がアービトラム(ARB)DAOを相手に資金凍結を求める申し立てを行った。4月に発生したケルプブリッジ攻撃後に凍結された3万765 ETH(約555億ウォン相当、約55億5000万円)が北朝鮮関連資産だという主張だ。
これに対してAAVEは「盗まれた資産で法的所有権を主張することはできない」と反論している。
ケルプ事件では約2億9200万ドル(約4310億ウォン相当、約431億円)が盗まれ、これもラザルスグループの関与が指摘されている。ドリフト事件と合わせると、わずか1か月で5億ドル(約7400億ウォン相当、約740億円)を超える被害が発生した計算になる。
セキュリティパラダイムの転換…「情報共有」が解決策となるか
クリプト業界は技術中心の防御から人的リスク管理へ視点を移しつつある。しかし、情報共有だけで攻撃を抑止できるかどうかは依然として不透明だ。
同じ組織が別の企業の採用過程に侵入している可能性を排除できないため、情報共有は有益だが万能の解決策ではない。
今回のリップルの決定は業界横断的な共同対応の必要性を示す事例と評価できるが、攻撃手法が進化を続ける中でセキュリティ戦略もより柔軟なアプローチが求められる。
🔎 市場解釈
北朝鮮のハッキング戦略はコードの脆弱性突きから内部人的侵入へと転換し、セキュリティパラダイムが変化している。
リップルの情報共有は個別企業の対応から業界共同防御体制への移行を示すシグナルと解釈できる。
ラザルスグループの活動拡大は単なるハッキングを超え、法的紛争や資産凍結問題にまで波及し、市場リスクを高めている。
💡 戦略ポイント
採用・内部アクセス管理の強化が最重要のセキュリティ要素として浮上している。
疑わしいアカウント、応募者データ、コミュニケーションパターンを共有する「集団防御」戦略の必要性が高まっている。
技術的なセキュリティだけでなく、内部者脅威検出システムや身元確認プロセスへの投資も求められる。
📘 用語整理
ラザルスグループ:北朝鮮の偵察総局と関連があるとされる代表的なハッキング組織
Crypto ISAC:暗号資産業界内でセキュリティ情報を共有する協議体
社会工学攻撃:技術ではなく人間の信頼を利用して情報を奪う手法
DeFi(ディーファイ):中央機関なしで金融サービスを提供するブロックチェーン基盤のシステム