ウベがもたらす新たなデザート革命!

ウィキツリー | 2026.04.20

ウベの画像

カフェのメニューに紫色が増えている。ラテ、ケーキ、ドーナツ、シェイクまで。こうした紫の正体は「ウベ(Ube)」だ。フィリピンで伝統的に親しまれてきた紫色の根菜がSNSを介して米国や欧州を経由し、国内のカフェ市場にも広がった。

ウベアイスクリームの写真
ウベアイスクリーム / Quantum Hydra-shutterstock.com

ドバイのもちもちクッキー(ドゥチョンク)やバター餅に続き、次の大型デザートトレンドとして業界が注目する素材がウベだ。

ウベとは

ウベはフィリピンをはじめとする東南アジアや太平洋諸島で栽培される紫色のヤムイモ(Purple Yam)の一種だ。日本で馴染みのある紫芋と見た目は似ているが別種で、切ったときの内部の紫色は紫芋より遥かに濃く鮮やかで、風味も異なる。

ウベの香りはバニラとナッツを合わせたような、甘く香ばしい特徴がある。紫芋やタロのような土っぽさや苦味はなく、抹茶のような渋みもない。甘くなめらかでクリーミーな口当たりのため、牛乳やクリーム、コーヒーと相性が良い。ラテやアイスクリーム、ケーキのベースとして使いやすい素材だ。

栄養面でも注目される。ウベには抗酸化成分であるアントシアニンが豊富に含まれる。アントシアニンはブルーベリーや赤ワインにも含まれる成分で、炎症抑制や血圧調整に寄与するとされる。カリウム、ビタミンC、食物繊維も含まれ、一時はスーパーフードとも呼ばれた。健康志向が高まる「ヘルシープレジャー」トレンドと合致する素材でもある。

フィリピンでのウベ

フィリピンではウベは昔から日常的な食材だった。屋台料理から高級店、贈答用の菓子まで幅広く使われる。代表的なのは「ウベハラヤ(ube halaya)」。ウベを蒸して潰し、バターと練乳を混ぜてジャム状に煮詰めたもので、パンに塗ったり他のデザートの材料に使われたりする。

もう一つの代表が「ハロハロ(halo-halo)」。フィリピン式のかき氷で、挽いた氷の上に小豆、ゼリー、果物などを載せ、一番上にウベアイスクリームをのせる。猛暑のフィリピンで国民に愛される夏のおやつだ。フィリピン式の餅「プト(puto)」にもウベを練り込んで紫色の餅を作り、バブルティーの材料としても長年使われてきた。

ウベの資料写真
ウベの資料写真 / kariphoto-shutterstock.com

ウベがフィリピンを越えて世界市場に知られるようになったのは米国、特にロサンゼルスとニューヨークからだ。両都市にはフィリピン系移民コミュニティが大きく、現地のフィリピン料理店やベーカリーでウベを使ったアイスやケーキ、ラテが先に定着した。

米国市場でウベが注目を集めたきっかけの一つがインスタグラムとTikTokだ。人工着色料なしでも鮮烈な紫色を出すウベデザートは視覚的に強く、SNSで目を引いた。「ube latte」「ube ice cream」といったハッシュタグが拡散し、フィリピン料理に詳しくなかった若年層にもウベが浸透した。この過程で「Ubecore」という新語も生まれた。ウベの紫色そのものが一種の美的コンセプトとして消費される現象を指す。

市場調査機関データセンシルによれば、2025年時点で米国のレストランメニューにウベが登場する回数は2021年比で約3倍に増えた。コストコ、トレーダージョーズ、ウォルマートといった大手リテールでもウベアイスやチーズケーキ、スプレッドが続々発売された。米スターバックスは「アイスド ウベ ココナッツ マキアート」を投入し、大衆化に火をつけた。

日本の香料会社T.ハセガワは2024年のトレンドレポートでウベを「今年の味」に選んだ。レポートはSNS上で天然由来の食品色に対する関心が持続しており、ウベの鮮やかな紫色と穏やかな風味が消費者にアピールすると予測している。韓国農水産食品流通公社(aT)もこの報告を引用し、ウベの台頭を注目トレンドとして紹介した。

抹茶の後を受ける候補として

ウベが特に注目されるのは、抹茶の後の空白を埋める素材として期待されているからだ。抹茶はここ数年、カフェやデザート市場の中心に位置し、ラテからアイス、ケーキ、マッコリ、ハイボールまで領域を広げ、「緑のデザート」全盛期を牽引した。

だが抹茶は好みが分かれる。渋みや草の香りが強く、初めての人にはとっつきにくい場合がある。一方ウベは甘く柔らかな風味で、受け入れやすさが高いと評価される。業界関係者は味に抵抗感が少なく、視覚的にも目を引くためSNSのコンテンツとして消費されやすい素材だと見る。

色味の面でもウベは強みを持つ。人工着色料を使わず濃く鮮やかな紫を出せる天然素材であり、最近の人工着色料に対する消費者の拒否感が強まる状況下で、天然由来の発色がブランドにとって使いやすい理由になっている。ビジュアル重視の若い層がSNSに投稿する写真を選ぶ際、色の強いメニューを好む傾向もウベ普及を後押ししている。

国内カフェ市場の動き

ウベデザートの写真
ウベデザート / The Image Party-shutterstock.com
国内でウベを最初に打ち出したのは弘大や聖水といったトレンド商圏の個人カフェだった。弘大のハワイキムでは「カフェウベ」と「ウベパンケーキ」がシグネチャーメニューとなり、더현대서울に入店したバトラーコーヒーでもフィリピン産ウベを使った「パープルラテ」が人気を集めた。

大手フランチャイズが参入するとウベの認知度は急速に上昇した。トゥーサムプレイスは2026年4月にウベラテ、ウベカフェラテ、ウベシェイクの飲料3種と「떠먹는 우베 아박」デザート1種をシーズン限定で導入した。トゥーサムプレイスによれば「トゥーサムウベラテ」は発売から3日(4月6〜8日)でノンコーヒー飲料カテゴリー1位、全体の飲料販売ランキング4位を記録した。コーヒーメニューが上位を占めるのが一般的な業界で、ノンコーヒー飲料が全体4位に入ったのは異例の成果とされる。

スターバックスコリアも4月14日から全国100店舗で「ウベバスクチーズケーキ」を期間限定販売し、参入した。スターバックスの関係者は一部店舗で先行導入し顧客反応を見た後、今後の展開を検討すると述べた。

デザートブランドのノティッドはウベミルキークリームドーナツ、ウベドバイパープルドーナツ、ウベラテ、ウベカフェラテ、クリームウベラテ、クリームウベ抹茶ラテの計6種を投入しラインナップを拡充した。パウダー状に加工したウベ原料を飲料だけでなくベーカリーやデザート全般に活用する戦略だ。

キーワード分析プラットフォームのブラックキウイによれば、2026年2月末から3月にかけ約1か月間、国内ポータルで「ウベ」の検索数は約3万4000件に達し、4月の推定検索数は約4万8000件に上る。MZ世代やアルファ世代がウベ関連飲料やデザートの写真をSNSに投稿し、オンラインでウベパウダーを購入して認証写真を共有する事例も増えている。

トゥーサムプレイスの関係者は、グローバルSNSの反応や検索動向、米国など主要市場の流れを総合分析し、国内消費者の反応を踏まえて導入時期を決定したと述べ、「トレンドが形成された際にいかに速く製品化するかが重要な競争要素になる」と語った。

海外で検証され、国内で速やかに吸収される構図

ウベの国内拡散パターンは、近年のデザートトレンド形成の典型に似ている。ドバイ発のもちもちクッキーも中東で生まれTikTokで拡散した後に国内で大流行となり、バター餅は上海のベーカリーチェーンのメニューが国内SNSで知られるようになって聖水や弘大の商圏を経て全国へ広がった。共通点は海外でまずソーシャルメディアを通じて検証され、国内のトレンド商圏で受容され、フランチャイズ参入で全国化する流れだ。

業界ではウベも同様の経路をたどる可能性が高いと見ている。ただし品質への懸念も指摘される。馴染みの薄い素材ゆえ人気が急上昇すると、一部店舗ではウベ固有の風味を理解せず色の再現だけに注力したり、紫芋を使って「ウベ」と称して販売する事例が出ている。海外でウベを体験した消費者が「一部のカフェでは紫芋を使ってウベと称している」と公に指摘するケースもある。

インハ大学消費者学科のイ・ウンヒ教授は、抹茶の時代の後に紫のウベが入ってくる現在、味と色、健康面の利点があるため消費者の関心は高まるだろうとしつつも、一過性の流行を超えて一つのカテゴリーとして定着するかどうかは今後を見守る必要があると指摘した。

自宅でも楽しめる

ウベは高温多湿の亜熱帯で育つ作物であり、国内での栽培は難しい。国内流通では主に冷凍ペーストや粉末(パウダー)形態で輸入される。オンラインで「ウベパウダー」を検索すれば容易に手に入る。温かい牛乳にウベパウダーをスプーン2杯ほど溶かせば簡単なホームカフェ用ウベラテができる。好みでミルクフォームを載せたり、エスプレッソショットを加えたりしてアレンジ可能だ。

ウベパウダーはラテだけでなく、パンケーキの生地やクッキー、ケーキに混ぜて紫のベーキングを楽しむ用途にも使われる。SNSではウベパウダーを購入して自作のウベラテやウベパンケーキのレシピを共有する投稿が増えている。

抹茶が緑のデザート時代を牽引したなら、今は紫の番かもしれない。フィリピンの古くからの食材がSNSとグローバル外食市場を経て、国内カフェのメニューに定着しつつある。