「財閥が師団長になった?」…刺激的見出しの裏にある本当の話
大企業のトップが「一日で陸軍の師団長になった」と伝えられた話の実態は、正式な指揮権を持つ現役の師団長ではなく、陸軍側が独自に設けた「名誉師団長」という肩書きにすぎない、というものだった。
SMグループのウオヒョン会長が陸軍第30機械化歩兵師団で星二つの軍服を着て兵士を査閲する様子が公開されると、メディアやSNSでは「財閥会長が一気に師団長になった」といった刺激的な表現が飛び交い、論争は韓国全国に広がった。軍の人事体制を飛び越えて民間人が最高指揮官のように見える光景は、実際の指揮権の有無とは別に、象徴性だけでも大きな波紋を呼んだ。
少将の階級章を付けてオープンカー…どうしてこんな光景が生まれたのか
2018年末から第30師団は、部隊施設の修繕や慰問品支援などを続けてきたウオヒョン会長を「名誉師団長」として任命していた。そして2019年11月、国旗掲揚式で任命1周年を記念するとして、当時の師団長とウ会長がともにオープンカーに乗り、数百名の兵士の行進を受ける式典が行われた。
その場でウ会長は、師団長の階級である少将の肩章を象徴化した星二つの軍服とベレー帽を着用し、兵士たちはウ会長に敬礼して儀式動作を披露した。「最精鋭300ウォリアー」に選ばれた兵士には名誉師団長の資格で表彰が授与されるなど、事実上師団長の権威を借りたような儀礼が行われた。
規定にない「名誉師団長」…訓令違反にあたるとの指摘
論争の核心は、こうした「名誉師団長」という肩書きが国防部の公式規定には存在しない点にある。国防部の訓令が定める名誉軍人制度によれば、民間人に付与できる名誉階級は下士官から大佐までに限られており、将校級の名誉軍人は国防部長官が人事審議委員会の議決を経て任命することになっている。
ところがウ会長は長官の任命を経ることなく、第30師団が独自に「名誉師団長」として推戴し、規定上は付与が認められない少将(星二つ)相当の階級を事実上与えられた形になった。名誉軍人制度の趣旨である「階級は与えられても職務は与えられない」とは反する運用であり、師団長の職名まで付けたことは訓令の趣旨に正面から反すると指摘されている。
軍も「不適切だった」と認めた…監察に至る異例の事態
世論の批判が強まると、陸軍本部は「第30師団の名誉師団長行事の論争を厳粛に受け止めている」と表明し、該当部隊に対する監察調査を開始した。軍は「ウ会長が実際に作戦指揮・統制権を行使した事実はない。部隊発展への寄与に対する礼遇としての行事だったが、儀礼の水準については一部不適切な点があった」と公式に認めた。
これを受けて国防部は、名誉軍人制度の運用基準や部隊独自の名誉職の活用慣行を点検し、類似事案の再発防止策を講じるよう指示した。企業会長が兵士を査閲した前代未聞の出来事はこうして監察対象となり、軍の人事・儀礼文化全般を見直す契機となった。
「軍服はただの服ではない」…権威と公正性を巡る議論に発展
ウオヒョン会長は大統領の海外訪問経済使節団に何度も同行し、韓日財界会議にも中堅企業代表として出席するなど、政治・財界のネットワークを広げてきた人物だ。さらに、当時SMグループの系列企業に大統領や首相の家族が勤務していたことが知られると、「権力に近い財閥会長が軍でも将官待遇を受けたのではないか」といった疑念も向けられた。
30年近く勤務して名誉除隊する幹部でさえ質素な伝達式すら満足に受けられない現実と、民間企業人が星二つの軍服を着て兵士を査閲する場面との対比は、軍内部の公正性や象徴的資産の配分方法に対する剥奪感を生んだ。「軍服と階級章は単なる衣装ではなく、国家への献身の象徴である」という世論が強まったのはそのためだ。
「民軍協力」と「過剰儀礼」のはざま…許容線はどこか
実際、民間人を名誉将校や広報大使に任命して兵営環境の改善や兵士の士気向上に活用する慣行は海外でも見られ、韓国軍もそれ自体を直ちに問題視する雰囲気ではない。しかし問題なのは、今回のように根拠規定が不明確なまま階級や職務、儀礼が過度に付与されると、軍の指揮体系や象徴的資産が軽んじられる恐れがある点だ。
今回の論争以降、軍内外からは「企業の寄付や支援は制度の枠内で透明に扱われるべきであり、将官階級や指揮行為を民間人に委ねてはならない」という線引きを求める声が強まっている。財閥会長が一夜にして師団長になったという刺激的な話の裏には、民軍協力と軍権威の境界をどこに引くかという重要な課題が残されている。