
ドイツの痛切な政策失敗は、最初の誤った判断がどれほど大きな後遺症を招くかを如実に示している。ドイツは2011年の福島原発事故を契機に、電力供給の約30%を占めていた原発を放棄し、不足分の電力をチェコなどから輸入する羽目になった。再生可能エネルギーの比率は高めたが、変動性の問題を克服できず、脱炭素の流れに逆行してガス火力発電所の新設にまで踏み切っている。その間に産業用電力料金が急騰し、企業倒産や失業者が大幅に増加した。今後、ドイツが原発復興競争から脱落すれば、産業競争力がさらに低下する可能性が高い。
エネルギー政策は国家の存立に関わる重大問題だ。人工知能(AI)革命などにより、その重要性は一層増している。特に原発はエネルギー主権と脱炭素、雇用創出の要である。今からでも政府はドイツを反面教師に、再生可能エネルギーと原発を組み合わせた合理的なエネルギーミックス戦略を緻密に練り直すべきだ。国家の百年の計が政権やイデオロギーで揺らぐようでは、原発を新たな成長の原動力として育てることは困難だ。産業現場にはすでに、文在寅政権の脱原発加速によって原発エコシステムが根こそぎ揺らいだ傷跡が深く残っている。政府は約束した新規大型原発2基の建設に向け、用地選定や放射性廃棄物処理場の整備など後続作業を急がねばならない。中東危機を契機に供給網の多様化や備蓄原油の拡充、エネルギー自給率の向上にも速度を上げる必要がある。