韓国のガラパゴス、の魅力とは?

ウィキツリー | 2026.04.29

インチョン・グルアップ島の風景

インチョン港から船で数時間かけて到達する西海の小さな島が、旅行者の足を引き止めている。現代社会の雑音から完全に切り離され、静かな余白を楽しめるこの場所は、近年バックパッキングやエコツーリズムの注目スポットとして急速に脚光を浴びている。何万年もの歳月が削り出した海食崖と広大な草原は、訪れる者に非日常的な開放感をもたらす。

インチョン・グルアップ島の資料写真
インチョン・グルアップ島。記事内容を基にAIツールを活用して制作した資料写真。

インチョンのグルアップ島は、オンジン郡ドクチョク面に位置する。ドクチョク島の南西約13kmの海上に浮かび、島の面積は約1.7㎢にすぎない。島名は、人がかがんでうつぶせに働く姿に似ていることから付けられた。実際に地形を見ると、中央がくびれ両端が突き出る独特の形状をしている。

グルアップ島は地質学的にも、火山活動と波の浸食が作り出した巨大な造形物と言える。島の至る所に波に削られた海食洞や海食窪が発達している。特に西側は緩やかな草原が広がるのに対し、東側と北側は切り立った崖が形成され、劇的なコントラストを生んでいる。この独自の景観から、環境専門家や旅行者の間では「韓国のガラパゴス」と称されることがある。

波乱に満ちた時間を経てきたグルアップ島

グルアップ島の資料写真
グルアップ島。記事内容を基にAIツールを活用して制作した資料写真。

静かな風景とは裏腹に、島は波乱に満ちた歴史を歩んできた。かつて1920年代まで、この一帯は西海岸最大のミノの漁場として名を馳せ、全国から集まった数百隻の漁船が夜通し賑わう海上の「ミノ市」の中心地だった。しかし1923年に襲来した大台風で村全体が大きな被害を受け、その後は次第に衰退していった。

現在、グルアップ島を象徴する場所の一つが島の西端にあるカエマリ丘だ。ここには木が一本もない開けた丘陵地が海へと長く伸びている。秋には腰ほどの高さまで伸びたスリチュやススキが見事な景観を作る。稜線に沿う散策路は四方が海に囲まれ、視界が開ける。夕暮れに赤く染まる落日や、夜空に広がる天の川はグルアップ島の見どころの一つだ。

この草原の主は野生の鹿である。かつて住民が放牧していた鹿が野生化し繁殖した結果、現在は数十頭の群れが丘を自由に駆け回る姿が見られる。鹿は人の活動が少ない早朝や夕暮れに最も活発になる。ただし雄鹿は角を持つため、繁殖期など敏感な時期には危険になり得る。適切な距離を保って観察することが望ましい。

韓国の3大バックパッキング聖地

カエマリ丘の資料写真
カエマリ丘。記事内容を基にAIツールを活用して制作した資料写真。

グルアップ島は「韓国の3大バックパッキング聖地」と呼ばれるほど、キャンパーから熱い支持を受けている。訪れるバックパッカーの10人中9人が選ぶカエマリ丘は、四方が開けているため日没と日の出の両方を一か所で楽しめるのが強みだ。夜にはテントの上に天の川が降り注ぎ、早朝には霧の中で草をはむ野生の鹿と出会う幻想的な体験が味わえる。冬季にはスクリョンやススキが風に揺れる景色も見応えがある。

利便性を重視するなら、村の目前にある大マルビーチが向いている。美しい砂浜とともに民宿、公衆トイレ、売店が近接しており、比較的快適に休める。カエマリ丘まで荷物を背負って登るのが不安な初心者バックパッカーのベースキャンプに適している。

カエマリ丘の資料写真
カエマリ丘。記事内容を基にAIツールを活用して制作した資料写真。

静寂を好むなら、穏やかなヨンピョンサンとドクムルサンの稜線を歩くとよい。モッキミビーチの向こうにそびえる二つの山頂に立てば、グルアップ島の全景を一望できる。特に標高128mのヨンピョンサンは島随一の展望スポットとされる。モッキミビーチからヨンピョンサンへ入ると山容が急になり、荒々しい岩場が露出する。山頂へ続く道は、まるで巨大な爬虫類の背を歩いているかのように錯覚させるほど岩の地形が発達している。

ヨンピョンサンと向かい合うドクムルサン(138m)は島の最高峰で、ヨンピョンサンより少し頼もしい印象だ。樹木が比較的多く生い茂るため、島固有の生態系を観察するのに適している。山行中は海風に耐えて育った松や名もなき野草に出会う。とりわけ、刻一刻と変わる海の色を高所から眺められるのが魅力だ。満潮時に海が満ちる景色と、干潮時に干潟や砂丘が現れる景色の対比がはっきりしており見る楽しみが大きい。

グルアップ島への道

グルアップ島へ至る道は決して簡単ではない。直行航路はなく、必ずドクチョク島を経由して乗り換える必要がある。旅行者はまずインチョン港の沿岸旅客ターミナルか、アンソンのデブド・バンアマリ港からドクチョク島行きの旅客船を利用する。インチョンから快速船で約1時間10分、車両運搬船だと約2時間40分を要する。ドクチョク島到着後に島々を巡る車両船「ナレホ」に乗り換えて初めてグルアップ島へ上陸できる。

ナレホ利用時は、日付ごとの運航ルートを事前に確認しておくことが重要だ。奇数日にはムンガプ島を経由してグルアップ島へ直行するため約1時間で到着するが、偶数日には周辺島を逆回りして最後にグルアップ島に寄るため2時間以上かかる。また、島の気象状況によって欠航が頻発するため、旅行前に必ず海運会社のホームページやアプリで運航有無を確認すること。

グルアップ島の隠れた絶景

カエマリ丘以外にも、グルアップ島には隠れた絶景が多く残る。島の中央にあたるモッキミビーチは両側から波が押し寄せる独特の地形で、かつて集落があった名残の電柱が砂に埋もれた異様な景観を見ることができる。ビーチの背後には風が作った大規模な砂丘が形成され、まるで砂漠のただ中に立つような静けさを醸し出す。

モッキミビーチとつながるウサギ島は、干潮時にのみ通路が現れる。海岸の岩が波に削られてできた海食窪は国内最大級の発達を見せ、独特の形状を呈する。特に巨大な岩の基部が深く抉られた様子は、大自然への畏敬を呼び起こす。ただし満潮時には道が完全に沈み孤立する危険があるため、必ず潮汐表を確認して行動すること。

カエマリ丘の麓には赤い砂浜が隠れている。この海岸が赤く見える理由は、周囲の崖や岩石の成分にある。グルアップ島はかつて火山活動で形成された島で、その岩石は酸化鉄を多く含み、空気や水に触れることで赤や茶の色合いを帯びるようになった。

海岸の背後に屏風のようにそびえる赤い凝灰岩の崖は、長年の風化と浸食を経て奇怪で壮大な造形を見せる。濃い赤色の岩と西海特有の青い海、崖上の草原の緑が絡み合い強烈な色彩対比を生む。赤い砂浜はアクセスがやや困難なため、島の秘められたビーチと呼ばれている。

村前の大マルビーチからカエマリ丘方向へ上がる途中、稜線に入る前に海岸崖下の小道を下る必要がある。正式な遊歩道ではなく険しい区間が多いため注意が必要だ。特に満潮時は道が途切れてアクセス不能になることがある。

名称は「赤い砂浜」だが、実際には繊細な砂というより赤い岩が砕けてできた粗めの砂と小石が混ざる。波が打ち寄せるたびに赤い小石が転がる音が独特で、波音とカモメの鳴き声だけが響く完全な孤立感を味わえる場所だ。

ビーチの端には波に削られた小さな海食洞や、象の鼻を思わせる奇岩が点在する。カエマリ丘の頂から眺める夕焼けも見事だが、日没時に赤い崖の下から水平線を見つめる夕景は崖の色をさらに赤く染め、夢のような雰囲気を作り出す。